住宅リフォームの営業会社にはどんな社員がいるか?



■はったりが好きな人々


 住宅リフォームの営業会社には、非常に個性豊かな人々がそろっています。

 リフォームの会社ほど、人間研究の場にはふさわしい場所は無いとくらい思っています。
 というのは、住宅リフォームの営業会社は、あまり経歴や年齢というものを面接の場では問わないものですから、それこそ色んな経歴をもった人間が集まるのです。

 私が見てきた人でいうと、リフォームの営業マンになる前は、寸借詐欺師をやっていたという40歳の男性の方がとても印象深いです。

 人間は自分の過去のことは美化して語りたがるものであるし、また、誰もその人の言っていることを本当のことだと証明できる人はいません。

 だから、かなりの大ボラや、はったりがまかり通る世界でもあります。
 何しろ、社長自ら、「お前ら、“うそとはったりは違う”からな」と常々言っていました。

 新宿でホストをやっていてナンバー2だったなんていう方もいました。何でも700万円の借金があって、それをホストをやって半年間で返したとか何とか。「じゃあ、何であなたは今、この会社にいるの?」と、鋭い人は突っ込みを入れてしまうところでしょうが。

 私はそういう、ちょっと聞くと胡散臭い、眉唾ものの話を聞くのは好きなので、面白がって聞いていました。

 「喧嘩自慢」、「絶倫自慢」も社員の間で毎日交わされます。話すことで一番盛り上がるのはこの二つです。血気盛んな若者が入社してくるので、自己主張は激しいし、体ごとのぶつかり合いというのもないわけではありません。

 私が尊敬していた上司が言っていた話が一番の思い出です。
 それは、上司の身の上話です。

 その上司は「会社を興して、一財産築いた後に、会社の金を横領して、ラスベガスで一ヶ月間で50億の金を使い、その後、背任罪で捕まって、二年間の刑務所暮らしのあと、もう一度、会社を興すべく今にいたる」と語っていました。

 彼の言葉で印象に残っているのは、

 年商100億の企業をつくるまでは簡単だ

 という言葉です。

 うそか本当かどうかは別として、そういう話を聞いていると、飛び込み営業の大変さがいつの間にか吹っ飛び、営業マンの悲劇を笑い飛ばしていけるような、そんな気持ちになってくるから不思議です。

■営業会社にも派閥はあるし、社内の人間関係の悩みはある


 訪問販売系の、つまりダイレクトセールスの営業会社だと、仕事は基本的に、営業マンと顧客という一対一の関係だから、あまり派閥というようなものは存在しないんじゃないかと思われる方もいるかもしれません。

 確かに、営業マンという“プレーヤー”として仕事をしている分には、あまり社内の人間関係のわずらわしさといったようなものが、例えば、オフィスで事務職として働くような労働現場とくらべてみると少ないのではないかという気もしてきます。

 しかし、アポインターとして仕事をした私自身の経験を振り返ってみると、どのクローザーに商談してもらうか?というようなことで結構頭を悩ませたりもしました。

 これは、営業経験者の方はよくわかると思いますが、どのクローザーに一緒に行ってもらうかで、商談の成約率というのがかなり変わってきたりするものなのです。

 せっかく一日中、飛び込みセールスをしてやっと取ったアポイントメントですから、出来れば優秀なクローザーに同行してもらいたいと考えるものです。

 でも、同行してくれる上司が二人いたとして、例えば、その上司の片方が「部長」で、もう片方が「係長」だったりします。その二人のうちの「係長」の方が、営業成績も上で、営業の実力も上だったとすると、そうなると、話はかなりややこしくなってくるのです。

 役職は下なのに、実力が上司よりも上であったり、下克上のようなことが頻繁に起こるのが営業会社の世界です。

 何であれ、そうした場合、「営業成績のかんばしくない部長をほっておいて、係長に同行をお願いする」というとき、営業会社特有の“悲喜劇”が生まれます。

 部下から商談の同行を頼まれなかった部長は、
「何で、ワシのところにいかずに係長のところに頼みにいくねん! ワシの方が役職が上なんやから、まず、ワシのところに来るのが筋ってもんやろ!(本文中に関西弁が出てきますが、これは私の行っていた会社に関西の方がたまたま多かった関係からです。あしからず。)」
 という風に、部長はスネて怒りだします。

 その後、部長は、  「係長に一緒に行ってもらう方がええんやろ?ちゃうんか?ちゃうんか?」と怒りだし、
 「もうええわ。勝手にせえ!」
 ということになって、部長との人間関係はこじれてしまうという始末です。

 今あげたのは、ごくごく小さな例ですが、そういった社内における人間関係の厄介ごとというのはよく頻繁に起こるものです。

 そう考えてみると、営業会社も世間一般の会社とあまり変わらず、社員一人一人が各個人で人間関係をさばいていかなければならないという点では、どこも同じだなあという感じです。

■色々ありますが、営業会社は面白いところです


 理不尽なことはよく起こるし、上司は部下をよく差別するし、弱肉強食の世界がまかり通っていて、とても住みにくいところではありますが、営業会社は「面白い」ところです。

 人間の欲望や情念や業といったものがむき出しになっており、社員があまりそういったものを隠さないから面白いのです。

 もっとも、このように考えられるようになったのは、会社を辞めてから何年もたった後の話ですが。

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