住宅リフォーム業界 退職についての悲喜劇こもごも




 住宅リフォームの業界は、退職者、転職者がやたらと多い業界です。  離職率が高い原因のひとつは、「飛び込み営業が精神的にしんどい」とか、「社内の人間関係がやたらとストレスになったり」とか、いろいろあるんですが、基本的には、この業界はいろんな意味で“弱肉強食”です。

 もちろん、トップセールスマンであれば、多少の個人プレーというのは許されるもんですが、営業成績が悪かったりすると、何となく会社に居づらくなるものです。

 営業成績がたいしたことなくても、上司にうまく取り入ることで、何とかクビにならずに済んでいる社員なんかもいます。

 何であれ、退職という行為がこの業界ほどドラマチックに見える業界はないのではないかと、私見ですがそう感じました。

■飛んで退職する営業マン


 住宅リフォームの業界では、退職の際に上司や会社に退職の意思を伝えずに逃亡することを、「飛ぶ」といいます。

 「あいつ、飛びやがった」とか、残った社員は口々に噂をしあうわけです。
 社員寮に住んでいた元社員の寮の部屋に、朝行ってみると、荷物などが全部、なくなっていて、もぬけの殻の状態になっていたりします。

 もともと、住所も不定で、職を転々とする若者が多かったりするものですから、会社側で飛んだ社員を探そうにも探しようがないということもあります。

 社員が飛ぶという現象は、退職の際にやっぱり、会社側に「辞める意思を伝えることがしにくい」ということもあります。古い体質の会社が多く、会社と社員が人情で結ばれているような錯覚を覚えてしまうような感じに社員がおちいるのも無理の無いことです。

 というのは、

  • お世話になった会社だから
  • あれだけお世話になった社長に対して「退職したいです」なんて言ったらどんなことを言われるだろう
  • 周りの社員に「裏切り者」だと思われるんじゃないか?

 などなど、退職をする社員の心の中で、思いは錯綜するからです。

■同じ会社を三回退職して、やっと退職に成功した男


 会社側にしても、「去る者は追わず」というスタンスであり、まあ、経営者の考え方もあるでしょうが、最近は去っていく社員を追うことは少なくなったようです。

 ですが、私が以前、勤めていた会社にこんな人がいました。

 彼は、私が入社する前に、2回もその会社を逃亡して、1回目は退職した後に自ら会社に戻ってきてしまい、2回目は埼玉県の某市で空き家にいるところを上司に発見されて連れ戻されました。

 3度目は私が入社したあとの退職でしたが、何とか退職が成功できたようで、別の似たような営業会社で楽しく幸せに暮らしているとの噂をあとで耳にしました。

 どうも何か因縁のようなものが作用しているのではないか?とその話を聞いて思いました。

■余談


 離職率の高い住宅リフォーム業界ですが、不思議と辞めた後に、辞めた社員同士の仲がよかったりするから不思議なことです。

 大変な飛び込みセールスを経験して、弱肉強食の社内の人間関係を共有した仲だということで、不思議と「同志」的な感情が生まれるのかもしれません。

 一生、この業界に骨を埋めようと覚悟を決めてやっている方もいますが、若い人でみんな結構、ちゃらんぽらんで、決意をもって入社したはいいけどすぐに辞めてしまう人は大勢います。

 辞めても、みんな若いですから、エネルギーに溢れていて、たくましく職を転々としながら頑張って生活しているようです。私もこれを書きながら、「みんな、どうしているのだろうか」なあなどと、少々、センチメンタルな気分になってしまいました。

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